AICA Shop design contest
コンテスト概要入賞作品審査総評
審査委員長 内田 繁
審査風景質の高いコンテストであった。素材の使われ方、デザインの質は第一級だろう。
最優秀賞、優秀賞を獲得した作品はバー、ヘアーサロン、歯科クリニック、そして薬局であった。一般にショップデザインコンテストというとレストラン、バーなど飲食店を中心にすると思われるのだが、ヘアーサロン、クリニック、薬局が上位に残ったのは、この対象となる素材の持つ性質によることと現代という時代をよく表している。

まずこの対象となる素材について考えてみると、ジョリパットという素材は空間の[地]となることに適した素材といえるのではないか。空間とは[地]と[図]によって構成されていると私はよくいう。空間の[地]とは空間の全体感をつくるもので、そのあつかわれる素材の分量、バランスによってさまざまな印象を空間全体に与えることになる。けして特化した状態をつくりだすのではなく静かに空間を整える。じつに地味な立場なのだが、実際この[地]の部分の大切さを見失ったデザインが多い。[空間とは時間をつくりだす枠組みである]。この良質な時間を決定するのは、けして特化したデザインが示すのではなく、この静かながら雄弁な[地]による。

一方、空間の[図]についてだが、多くのデザインは[図]をつくりだすものだと思われている。他で見ることができないような[図](デザイン)が空間を決定するものだと考えられている。デザインとはある種、人に驚きを与え、よろこびをつくりだすものである。だが、過剰な[図]の構成にはしばしば戸惑うことになる。こしたものはデザインの誤解の上にあるのだろう。デザインとはもっと冷静なものである。

その点を考えたならば、このコンテストのデザインはよく心得たものであった。最優秀賞を獲得した勝野明美、ヤギタカシさんの[dcb]などは白と黒という単純な色彩だけで空間をつくっている。その色彩の使いかたのバランスは絶妙なものである。白と黒というたった2つの色彩的要素だけで実に深い空間をつくりだしている。この手の飲食空間がこれ見よがしの素材の氾濫のなかでこれほど制御しながらも豊かさをつくりだしているのは評価にあたいする。熊沢信生、岩橋翼さんの[山手歯科クリニック]、そして峯田健さんの[seeds hair]などは空間のバランスの良さとオブジェクトとなる家具、造作とのバランスの良さが質を高めている。また、庄司圭介さんの[つつじ薬局]は大胆な空間造形が清潔感の上で躍動感をつくりだしている。

今回の[アイカショップデザインコンテスト]はいずれをとっても良質な作品に恵まれたといえるだろう。

審査委員 笈川 誠
今回のコンペ応募作品を拝見して、「素材」を生かす、使い切ることの難しさを再認識させられた。このコンペはアイカ工業の製品を使った施工例が対象だから、各製品の特徴・特性を意識した作品が多く集まった。が、これらがすべて各製品の個性を生かし切っているかと言われればそれは難しいところだろう。逆に言えば、受賞作品は素材を生かし切っていたということであり、更にそこに創造性が加わり、デザイナーの空間やカタチに対する考え方がきちんと具現されていたということである。今や日本は世界を代表するデザイン大国であり、ある意味空間デザインがその領域をリードしているともいえる。応募作品を見てもやはりそこに “腕のよさ”が見て取れる。素材もしかりでその開発力やニーズに対する対応力は世界のデザイナーも大きな信頼を寄せている。素材の次は、それを使い切る「才能」をどう開発していくかが問われることになる。限りない才能の開花に期待したい。


審査委員 野田 近
商業施設とは、「商品」や「サービス」を引き立たせる為の空間であり、弊社の商品が、そこにどのような使われ方をし、各店舗の集客に繋がる魅力ある空間を創出できるかという点がひとつのポイントでした。
力作が揃う中、最優秀賞に選ばれた「dcb」は、シームレス加工が可能な「アイカハイマックス」を、非常にシンプルな形でバーの天板として使用しています。主役である「カクテル」がそのステージに置かれた時、より映えるデザインと言えるのではないでしょうか。
また、メラミン化粧板・カラーコア化粧板・ポリエステル化粧合板はそれぞれの物性を考慮し貼り分けられ、アイカ化粧板類の柄連動性を上手に活用し店舗の意匠性と機能性を両立させています。今後も皆様方に魅力ある新商品を提供していく所存です。
アイカショップデザインコンテスト アイカ工業株式会社