審査総評

審査委員長 古谷誠章(早稲田大学教授 NASCA代表)
審査風景修デザインは単なる修復と違い、既存の空間のよいところは残して不要なものは切除し、新たに付け加える新規の要素も組み合わせて、相乗的にそれまでにない新しい空間の価値を生み出すことだと考えます。ここに入賞された10点の応募作品は、それぞれに生まれ変わった空間がとても新鮮であり、改修デザインならではの既存空間の特性が生かされたもので、いずれも力作揃いだと思います。
なかでも最優秀となった「甲陽園Y邸」は、ごく一般的なマンションのリフォームでありながら、曲面のあしらい方も効果的で、既存躯体の枠の中でここまで劇的に印象を生まれ変わらせた手腕は見事。惜しくも優秀ではありましたが「NOMIEMON」は既存の民家の納屋を改装したもので、他種類の製品を使いながら全体が渾然一体となった浮遊感のある空間が魅力的です。既製品の階段がここまでマッチしたアクセントになっているのにも脱帽しました。
同じく優秀の「八王子緑町の家」は、玄関部分のはねだしの技一つで、こうも築27年の既存民家の骨格の印象を変えられるものかと感心しました。また、もう一つの優秀作「合築住宅 -2棟の統合・合体-」は、2棟の隙間空間という死蔵された空間を見事に主役の空間に変身させています。どちらもその手際の良さが際だっていて、まさに改修であるからこそ可能なデザインとして高く評価しました。
審査委員 石田典彦(リフォームビジネス研究所所長)
募作品はそれぞれに優秀な作品が寄せられていたと思います。
主催者のアイカ工業の商品が採用されている優秀な作品ということで、通常のリフォーム工事、リニューアル工事の場合のコンテストと違って、2重のフィルターを通して今回の審査にあたらさせていただきました。
アイカ商品につきましても、通常の採用方法ではなく、意表つく採用方法、美しい採用方法を期待して見させていただきました。結果として賞を獲得した作品は住宅のリフォーム事例が多くなりました。
住宅のリフォームは小規模で、それぞれにBeforeの状況が違い、 After後の状況の変化が大きく、リフォームの工夫と、その結果与えられる施主の感動が感じられるものです。
住宅系以外の作品にもは優秀な作品は多いのですが、今回は住宅系に票が集中しました。次回は期待したいものです。
審査委員 河合春樹(アルコット建築設計事務所主宰)
の審査基準は「使用されているアイカ製品」が「リフォーム空間を魅力的にしているか」、また「他社製品では代替できないデザインか」だった。建材の効果にまで意識が及んでいない案は、リフォームとして優れていても上位には残せなかった。
上位賞は多数決で絞り込んでいったが、最優秀案は、曲面壁の建材が醸成する空間バランスの良さが魅力的で、破綻が少なかった。優秀案の絞込みは意見が分かれた。
私は「テーブルのいえ」を強く推した。建材が空間をコントロールするような力が感じられたし、リフォーム空間ならではの新旧の対比が際立っていた。ディテール面での詰めが甘いという指摘があり、入選に甘んじた。
WEB上での審査だから、読取りには限界がある。どの部分にアイカ製品が使われているのかよくわからない作品も少なからずあった。上位作品に住宅が多く残ったのは意外だった。アイカ製品は住宅というスケールの中でデザイン性を発揮しやすいのかも。
審査委員 豊田正弘(「月刊住宅建築」編集長)
宅のリフォーム・リニューアルを目にする機会は増えてきたが、これだけ多くの作品をまとめて拝見するのは初めてだ。上位作は製品の特性・素材感がよく生かされており感心した。
最優秀賞の「甲陽園Y邸」は、浮遊するような曲面壁の使い方が新鮮で、必要な領域を確保すると同時に、明るく開放的なエントランスを演出している。
優秀賞は、「合築」の隙間を中間領域として生かし、外壁のジョリパットでさりげなくまとめた「Double House」、「柚子肌」の白い壁を内外に連続させ、シンプルで美しい住宅をつくり上げた「八王子緑町の家」、階段・収納扉など多くの製品を巧みに用い、住宅の納戸を落ち着いたオフィスに変貌させた「NOMIEMON」。また、人工大理石の大テーブルで古民家のイメージを一変させた「テーブルの家」、既存の蔵を増築に組み入れた「川越の家TERRA」、化粧板による色鮮やかな書棚をつくった「スペイン国営セルバンテス文化センター東京」も印象的だった。
循環型社会に向けた意義深いコンテストであり、長く継続されることを望んでいる。
審査委員 野田 近(アイカ工業専務取締役)
BAコンテストは、改修や増改築の現場で、アイカの製品がどのように使われて空間が変貌するかを目的として開催致しました。施工事例というと、どうしても新築物件に接する機会が多かったのですが、本コンテストを通じて、リフォーム・改修の現場で多くのアイカ商品が活躍していることを改めて実感できました。特に最優秀賞の「甲陽園 Y邸」では店舗やオフィスなど非住宅の市場での販売実績の高い「アイカアール」をエントランス部分にご採用いただいたことで、マンションのエントランスを「おもてなしの空間」にまで進化させており、「アイカアール」の新しい使われ方をご提案いただいたと思っております。
改修前の写真と図面を必須条件としたことで、他のコンテストよりも一段階ハードルがあがることになる為、応募進捗を心配していたのですが、最終的にはエントリー171件・物件応募122件と多数の作品をいただき、ご参加いただいた方・関係各位の皆様に感謝いたします。