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施工例コンテスト2012

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審査講評

審査委員長

飯島 直樹
飯島直樹デザイン室 代表

たとえば千利休の茶室「待庵」は、衣服のように土と 紙と木で包み込まれた空間で、素材が決め所なのだった。
「待庵」ほどではないにせよ、素材を主題にすることは空恐ろしいことだ。このような素材の観点をどのように調停するのだろうか。それがこのデザインコンテストの関心だった。
少し驚いた。このコンペの受賞結果上位に住宅が居並んだからだ。デザインはその時々の気持ちや過酷さを映し出す。私はこの結果に今の時代のフェーズを感じた。素材にオモネリがちな商業空間の遠方で、リアルな生活に地続きな、住宅における「生活の新形式」の希求があり、そこに素材が気持ちよく参入している住宅が多かったのだ。
中でも「OSHIKAMO」の強引な平面プランの意志や最優秀賞の「戸田邸」の輪舞するような意志にそれは感じられ、しかもそれらは「待庵」ほどではないにせよ、普通の合理に収まらない跳躍さえあった。

審査委員

永山 祐子
永山祐子建築設計 代表

今回の応募作品は力作が多く、選考には時間がかかった。特に個人住宅の作品はバリエーションも多く、その空間の豊かさが印象的であった。応募作品の多くはジョリパットを使用素材としてあげていた。ジョリパットは特に木造、鉄骨造建築で多く使われている外装材の一つだ。多数の優れた作品が集まったのはこの素材の特徴を良く表していると思った。選考当初から最も印象的であった「戸田邸」が大賞となった。広島県のいわゆる造成された新興住宅地の中で地面から大きく持ち上げられて建つ螺旋状の一続きの空間で構成された住宅は周囲との関係の取り方が秀逸であった。住空間は空高く持ち上げられ視線は遠く瀬戸内海へと抜ける。住宅の下のピロティは住宅地の中の小さな公園のように開かれている。インテリア作品で印象的だったのは「COME」。博多の繁華街に隠れ家のようにある7席のイタリアン料理店。平面は小さいけれど高さを活かした大屋根が店内を優しく包む。厨房とカウンターの関係など細かく配慮の行き届いたデザインで居心地の良い場所を作り出している。

山倉 礼士
『月刊 商店建築』編集長

質の高いプロジェクトが集まり、住宅、非住宅およびリフォームという、求められる主題が異なるデザインを横断する審査は難しいものとなったが、写真や図面資料からそれぞれの施工例の持つ魅力、骨格が浮かび上がっていったように思う。
例えば、仕上げ材の「ジョリパット」であれば豊かな表情と自在な質感が特徴と思われるが、対比的に異素材と組み合わせたものや、光の取り込み方により表面の質感を際立たせたものなど、実空間でのシーンを考えて設計されたものが強く印象に残った。この素材でなければ実現できない表現や、オリジナルの形状など、他のものには置き換えられないデザインに出合えたことに、さらなる進化を予感している。
また一方で、機能性マテリアルとして、そのもの自体の存在を消すことで、空間全体のデザインに貢献している、いわば"黒子"としての素材の使われ方にも、設計を手掛けた方々の個性が現れているように感じた。

伊東 善光
アイカ工業 常務取締役 住器建材カンパニー長

過去実施した5回は、ジョリパットコンテスト2回、ショップデザインコンテスト2回、Before Afterコンテスト1回と絞ったかたちで実施してきました。今回は住宅・非住宅、新築・リノベーションと応募対象を広げ、また対象商品もアイカの全商品ということで多数の応募を頂き、どれも質の高い作品で審査は非常に悩まされました。
審査をする中で、アイカ商品が様々な空間演出をお手伝いしていると改めて実感する反面、素材の組み合せ、使われ方から今後の商品開発を考えさせられる事も多々あり、魅力ある商品を提供できる様に努めていきたいと思います。
今後も建築に携わる方の目標となる様なコンテストを継続していく予定です。

岩瀬 幸廣
アイカ工業 取締役 建装材カンパニー長

今回は、大変多くのご応募を頂きました。内容も住宅から店舗、病院、学校と多岐にわたり密度の濃い作品が多く、それ故審査も混迷を極めた状況にありました。私の担当させていただいた(店舗・公共建物分野)でも質の高い作品が沢山あり、慎重に審査をさせて頂きましたが、残念な事に、化粧板の使用方法に真新しさが少ないように感じられました。
デザイン・設計の皆様に期待したいことは、機能性の高い化粧板を家具の用途以外に応用し、新しい活用方法を是非提案して頂きたいことです。
アイカは、今後もより質の高い商品を開発してまいります。応募される皆様からは更なるニーズ・ウォンツを頂きたく、宜しくお願い致します。

加藤 義昭
アイカ工業 上席執行役員 化成品カンパニー長

今回は4年ぶりの開催ということに加え、対象もアイカの全商品を採用した店舗、ビル、住宅、マンション、医療・福祉施設、公共施設等における新築、リフォーム・リノベーションと幅広く実施し、非常に多くの作品を応募頂き審査は大変難しいものでした。
最優秀賞の戸田邸については、自由なカタチ・継ぎ目のない壁面展開をしており、ジョリパットの特徴を十分に活かしつつ、建物も宙に浮いたデザインとなっておりまさに常識を越えた作品だったと思います。
その他の受賞作品についても、アイカのジョリパットとメラミン化粧板の組み合せ、ジョリパットやメラミン化粧板と異素材との組み合せ、光と素材の融合など様々な工夫が見られ、どれも個性に溢れたものでした。

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