敷地は、街区があまり細分化されていない緩やかな環境が残されている場所にある。そこで街並みに対して閉鎖的にならない居空間を計画し、街との新たな関係性を築こうと試みた。
窓は内部と外部を隔てるものでもあり、同時につなげる存在でもある。こうしたパラドックスを読み解くことからこの居空間は成立している。道路から遮るもののない大開口は、ネガティブに設置したカーテンウォールによって構築している。斜めにしたことで、まず門型フレームが庇状に機能して夏季のガラス面への日射を防いでいる。次に1階外部と2階内部の双方に適度な空間を設えることができ、街並みと居空間の間に距離感が生まれた。結果として、街を意識したシンプルな生活には欠かせない境界となった。
構造は木造在来工法にスチールブレースや金物を組合せた木造ハイブリッドにより門型フレームを可能にした。カーテンウォール部は丸鋼φ16を二重にした透過性の高いブレースを耐震要素とした。また、柱と梁の接合部にはスカイジョイントを使用して仕口の強度を上げた。設備は1階の床スラブに温水パイプを埋設した蓄熱床暖房とした。この輻射によって連続した居空間の快適性を支えている。

道路から遮るもののない大開口には、カーテンウォール・吹抜・階段によってバッファゾーンを形成する
■外壁、珪藻土風フラット(特注色)

|
荻窪から井荻につながる古い住宅地のほぼ中央で、都心ながら街区があまり細分化していない街並みに位置する
■外壁、珪藻土風フラット(特注色) |

ネガティブに設置したカーテンウォールが、街並みから生活へのシーンを切替える緩衝帯として空間を調整する
■外壁、珪藻土風フラット(特注色) |

上部にFIX下部に可動部とした段窓は、 採光とアイレベルを外した通風開口という基本機能に則している
■外壁、珪藻土風フラット(特注色) |
