敷地は、北面接道で南隣地が土手状に高い。施主は、文学と音楽に造詣が深く、その膨大な書籍類の書庫と、随時それらを手にとって楽しめるスペースを希望された。
採光条件の悪い1階平面中央に、書庫とその他収納をまとめたところ、平面で3.6m角となった。 １階居住空間は、書庫周囲をぐるりと囲む回遊空間として計画した。 建物外周に近い明るい空間を回遊しつつ、書庫に随時出入りできる。
回遊空間は、3.6m 角の書庫外形を外側に 1.8m ないし 2.7m 「オフセット」して、形成した。 四隅は、回遊行為の率直な表現として書庫角中心の「オフセット」による弧とし、隣地に正対しないのでプライバシー確保の条件が良いと考え、開口部とした。 面材は、安価なポリカーボネート平板をコールドフォーミングで嵌めた。
採光条件の良い２階は、気積の大きなＬＤＫとした。 隅が無いため視線の行き止まりが少なく、広がりの感じられる空間となった。
外壁・軒天仕上は、特徴的な平面形状をシームレスに表現する意図で、モルタルの上にジョリパット650シリーズゆず肌JP-100を吹付けた。弧部分の微妙な陰影が印象的な、抽象度の高い外観が成立した。

外観北面。周囲が映りこむ曲面ポリカーボネートと好対照の、シームレスでマットな外壁ジョリパット仕上。 ■外壁(軒天)、ゆず肌(100)

外観北西面。外壁と軒天のすべてを、モルタルの上ジョリパット650シリーズ吹付けで仕上げた。 ■外壁(軒天)、ゆず肌(100)

 

1階寝室。建物南西部の曲面開口部を通して、隣地斜面の豊かな緑が室内に取り込まれる。

 

2階キッチンからリビング方向。隅が無い平面形状により見通せない部分があるため、広がりが感じられる。