AICA 2013年施工例コンテスト AICA Project Reference Contest

Copyright

審査総評

審査委員長

青木 淳(青木淳建築計画事務所)

「実作での試みが新たな製品開発につながる好循環」
質の高い作品が314件集まり、入選作を絞り込むのに大変苦労した。審査は、アイカ製品が適材適所で用いられているか、その製品の魅力を十分に引き出しているかという観点を中心に行った。可とう性や和を感じさせる風合いなど、ジョリパットの特徴を引き出した施工例が多く印象に残っている。 また、化粧板やフィルムには、新しいデザインの可能性がまだまだ残っていることを気づかされた。一つひとつの実作によって、素材の新しい側面が発見され、それが次なる開発につながっていく。そうした好循環を生むコンテストに今後も期待したい。

●栄町の光溜
マットな表情のジョリパットを用いた外壁は、大屋根の下の陰影を浮かび上がらせ、既存庭の背景として静かな佇まいを見せる。一転して、室内はジョリパット白のゆず肌を使用し、中庭の陽光を室内に届ける。どちらも、建築のあり方に合った素材の選択である。

●LIGHT VALLEY
J の字に湾曲した平面と、内部空間のおおらかさが特徴的。白木の壁面に、白いポリ合板でつくられた棚やキッチンカウンターが挿入される、そのバランスが適切だ。薄く長い棚は空間のアクセントに。空間に沿って湾曲するキッチンカウンターも存在感を放っている。

●KORD tokyo
さまざまなテクスチャーをもつ白壁を背景に、漆黒の家具が置かれている。しっくい調の白いジョリパットは、そのなかのひとつの要素にすぎない。しかし、同時に自己主張のある素材として、全体のデザインに奉仕している。さり気ないが適切な使用方法である。

禿 真哉(トラフ建築設計事務所)

「素材の質感を際立たせるような新しい使い方に共感」
素材の観点から作品を見る貴重な体験になった。総じて洗練された作品が多く、素材を作品の中に上手くなじませている。一方で、素材の質感を際立たせるような、新しい使い方へのチャレンジにも共感した。使用素材の傾向としてはジョリパットを使用したエントリーが多く、個人的にはメラミン化粧板の応募作品をもっと見たいという思いだ。今回の審査を通じ、設計者が身近に使うことができる素材として、アイカ製品が定着していることを改めて実感。自分自身も含め、素材をつくるメーカーとの対話の機会をこれからも大切にしていきたいと思った。

●西谷の家
外壁表現の最適解として、ジョリパットアルファをひとつの仕上げパターンで使うのではなく、複数パターンの組み合わせによるコントラストを表現に利用した、新しい使い方を評価した。採用パターンを、他のパターンに交換できる点にも素材使いの可能性を感じる。

●二条の雑貨店
色や素材、既存建物との相性など、総合的にバランスとセンスの良い作品だ。素材を主役にするというより、むしろ従属させて空間をつくり上げる巧みなプランに注目した。ディテールの細かさや家具のプロポーションも手伝って、空間編集的な美しさが感じられる。

●めじろ台霊園 休憩所
柱という建築の部位に注目し、空間の特徴的なエレメントに仕立て直している点に興味を覚えた。メラミン化粧板で仕上げた柱は、表面積的には小さいながらも、風景が映り込むほどの光沢をもつ。リノベーションであることから、既存柱の利用法としても共感できる。

山倉礼士(『月刊 商店建築』編集長)

「視覚的な効果を生む仕上げの可能性を改めて認識」
ジョリパットやメラミン化粧板など、日常的に目にするアイカ製品の新しい側面を発見できた。たとえば、ひとつの素材に対して、表面仕上げのパターンを変えることで多様な表情をつくり出した外壁や、化粧板を使って色を塗り分けたような効果を生んだインテリアなど。それぞれの視覚的効果を楽しみながら審査ができた。作品ごとに特徴が異なるため選出は難しかったが、カラーバリエーションや表面仕上げの多彩なパターンについては、実物サンプルを参照しながら審査を進めていくなど、具体的な手がかりをもって判断できたことは大変有意義だった。

●Terrazza shirokane
ひとつの飲食店の中に異なる色と質感をもつ素材が用いられ、化粧板や化粧フィルムなどで丁寧に仕上げられている。その様子は、昼と夜のシーンを一度に見られるような効果を生んでいる。色彩効果と建材の選択が、非日常感のあるワインバーにふさわしいと感じた。

●T.D.C
白を基調とした空間の中に色彩や異素材を挿入することで、「訪れた患者の緊張感を緩和する」という設計意図をカタチにした。メンテナンス性に配慮したアイカの床材を選択するなど、求められる機能を満たした上でのデザイン提案がある点が強く印象に残った。

●光舞台の家
「採光」というテーマに対する解法として刮目すべき作品。採光を得るために小判型の平面を立ち上げた住宅が、立体的な敷地状況から導き出されている点も評価した。光溢れる白い内部空間はワクワク感を醸成。採光計画という視点がこの建築に見事に結実している。

伊東善光(アイカ工業 専務取締役 営業カンパニー長)

「製品のより幅広い普及を目指すコミュニケーションの場として期待」
住宅・非住宅、新築・リノベーション問わず、あらゆるジャンルから多くの作品応募をいただいた。リフォーム・リノベーションについては年々応募数が増えているが、採用製品は限定されている印象。この分野でアイカ製品がつくり手のニーズに応えきれていないと感じる。また、近年リリースしている機能製品の採用実例が少なかったことも残念であり、製品の告知、浸透が十分でなかったことを痛感している。今後もニーズに応える製品開発に取り組み、皆さまとのより一層のコミュニケーションを図るためにも、コンテストは継続していく予定だ。

●某インテリアメーカー
ショールームの改装において、会社が重ねてきた時を、ジョリパット爽土の版築仕上げによる地層表現に置き換えている。応接室は3D のメラミン化粧板や小口化粧材を効果的に使用。アイカ製品とその仕上げパターンを、空間コンセプトに上手く当てはめた好例だ。

●大工さんち
平屋住宅の壁、天井にジョリパットを使用。現わしの柱梁を引き立てる名脇役として、優しい生成り色を広い面積に用いている。中庭を採り入れた空間構成も評価。アクセントとしてジョリパットの赤を採用している点にも、今後の素材使いの可能性を感じた。

●渋谷ちかみちラウンジ
近年、パブリックなパウダースペースの見直しが進んでいる中でも、もっとも完成度の高い駅施設のひとつ。街づくりを考慮した空間構成と、日本ではまだ少ないアート壁面を積極的に採り入れ、グラフィカやセラールも効果的に使用されている点を評価した。