AICA 2019年施工例コンテスト AICA Project Reference Contest

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特別賞

京町家旅館 すみ蛍

設計/
株式会社 キノアーキテクツ 木下 昌大 撮影/中村 絵
  • 使用部材
    外装(壁): ジョリパットアルファ ⽔墨(濃⾊)(JP-100T5403)
    内装(キッチンパネル): セラール(FKM6400ZGD)

二軒長屋の京町家を旅館へ改修
陰翳の中に潜む日本の美を体感

京町家を改修した旅館がブームとなって久しい。ステレオタイプの⽇本らしさを、襖絵、障⼦、格⼦など「記号」を散りばめて表現することが多いが、⽊造2階建ての2軒⻑屋の京町家を旅館へ改修するにあたり、記号ではなく「空間」で⽇本の美を体感できる宿を提案したいと思った。
⾕崎潤⼀郎著『陰翳礼讃』に「美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える」という⼀節がある。客が抱く昔ながらの京町家のイメージを反映しながらも、光の濃淡、陰翳によって⽇本古来の美を表現できないかと考えた。
内部は、通り庭を⽴体的に拡張し光を採り⼊れながら、素材や艶の異なる⿊⾊で仕上げ、光に反射する多様な陰翳を作り出した。キッチンパネルやシンクなど使⽤頻度が⾼い箇所は、利便性を考慮し、⿊⾊の⼈⼯⼤理⽯等を選択している。⼟間は伝統的な左官技術を使った炭モルタルで仕上げ、外壁には現代的な技術を⽤いたジョリパットを採⽤した。⿊の濃淡が味わい深い「⽔墨(濃⾊)」は、焼杉板と調和する⾊合いでもある。
観光客が期待する京町家らしさと、陰翳の中に潜む美を感じるという⽇本固有の美的感覚を呼び覚ましてくれる旅館である。