気候変動問題への対応

気候変動問題への対応に関する基本的な考え方

地球規模の課題解決に取り組む国際機関、世界経済フォーラム(WEF)が毎年発行している「グローバルリスク報告書」において、発生可能性が高く影響が大きいリスクとして気候変動に関連するものが複数挙げられています。世界規模で増加している異常気象を原因とした災害によって当社も近年幾度か被害を受け、気候変動は大きな事業リスクであると痛感しています。
このような認識から、当社は現中期経営計画に組み込んでいるマテリアリティに「気候変動対応」を選定し、定量的・定性的目標を設定するとともに、2050年度カーボンニュートラルを宣言し、2030年度までに2022年度比30%の温室効果ガス排出量削減を目指すこととしました。さらに、2025年5月には、2030年度までの削減目標を、Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)の基準に準拠した1.5℃目標に整合する水準とするため、従来の30%から42%に引き上げました。この野心的な目標の達成に向けてグループ一丸となって取り組むべく、アイカグループ全従業員を対象としたeラーニングにこの内容を組み込み、講じるべき削減策について理解を深めました。

気候変動問題への対応に関するガバナンス体制

社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」の内部に「気候変動問題対応分科会」を設置し、温室効果ガス削減についてのPDCAを回しています。また、分科会の活動内容を報告する場として、2024年度より半期に一度、「サステナビリティ推進会議」を開催しています。本会議には当社取締役およびグループ各社の代表者が参加し、活動の進捗状況を監督するとともに、今後の方策についての議論を行っています。気候変動を含むサステナビリティ全般に関する最終的な説明責任は、サステナビリティ推進委員会の委員長を務める社長執行役員が担っており、サステナビリティ推進会議の議論の内容は取締役会へ報告されています。

気候変動問題への対応に関するリスク管理

気候変動対応に関するリスク管理は、全社的なリスクマネジメントの中で行っています。この過程を経て、「気候変動」を重大なリスクとして公表するとともに、マテリアリティの一つとして特定しています。気候変動に関するリスクは、「気候変動問題対応分科会」やサステナビリティ推進部において、定期的に検証しています。

シナリオ分析の実施状況および戦略への組み込み

リスクと機会の特定を目的として、2020年度に当社のステークホルダーに対してヒアリングを実施し、気候変動の影響によるリスクと機会、気候変動に対応するために当社が取り組むべき事項を整理しました。2022年度には、特定したリスクと機会の各要素について、1.5℃・4℃の世界における2030年・2050年時点の定性的インパクト評価および定量的財務インパクト評価を行い、下記の通り整理するとともに、対応策を検討しました。これらの内容は、現中期経営計画に反映しています。

シナリオ分析の実施概要および結果

シナリオ分析の対象範囲

  • 移行リスクおよび機会:国内建設市場
  • 物理的リスク:アイカグループ国内外生産拠点

想定したシナリオの概要

1.5℃シナリオ
(気候変動への対策が進み、規制が強化される)
4℃シナリオ
(対策が遅れ、成り行きに気温上昇する)
政策
  • 国際的な協調のもと、温室効果ガス排出量を抑制するための炭素税や排出量取引制度などが導入
  • 現在施行されているレベルの政策が継続
市場
  • ガソリン需要の著しい低下
  • 多くの企業が脱炭素を表明
  • ライフサイクル全体での温室効果ガス排出量削減ニーズの増加
  • ガソリン需要の継続的な増加
  • 異常気象の頻発化や気温上昇に伴い、気候変動への適応に関連した商品の需要が増大
社会
  • 脱炭素社会が浸透しライフスタイルが変化
  • 熱波や水不足を背景に生活可能地域が大幅に変化
  • 感染症の頻発化
異常気象
  • 緩やかではあるものの気温上昇により頻発化
  • 日本における洪水発生頻度が20世紀末と比較して4倍になるなど、顕著に頻発化

定量的インパクト評価結果および対応策

  • 定量的評価結果および対応策の表

定性的インパクト評価の結果はこちら

従来の売上高原単位削減目標を総量削減目標へ切り替え、現中期経営計画「Value Creation 3000 & 300」に組み込みました。より強力な削減策を講じ、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。

2024年度の主な取り組み

再生可能エネルギーの活用

温室効果ガス排出量削減策の有効な手段として、再生可能エネルギーの活用を進めています。国内主要拠点においては購入電力の約40%を再生可能エネルギー由来電力に切り替えており、徐々にその比率を高めています。2024年度からは国内外ともに再エネ証書の活用も始めました。太陽光発電設備の導入も進めた結果、2024年度における電力の再生可能エネルギー比率は、国内グループ生産拠点が31%、海外グループ生産拠点が8%となりました。

2024年度における太陽光発電設備導入拠点

  • アイカ工業㈱ 広島工場

  • アイカ工業㈱ 名古屋工場

  • エバモア・ケミカル・インダストリー社 南投工場

バイオマス燃料の活用

アイカ・ラミネーツ・インディア社(インド)では、使用エネルギーの約90%をバイオマス燃料から得ており、石油燃料の使用量を他拠点に比べて大幅に低く抑えています。2024年からは従来使用していた木片から、含水量が少なく燃焼効率の高いブリケット燃料に切り替えました。

  • 木材チップを高圧縮したブリケット燃料

当社独自の樹脂合成技術・素材活用技術をもとに、気候変動対応に資する商品を開発・拡販します。商品の高付加価値化を図り、気候変動によるコストアップをカバーし、激変する世界においても持続可能な成長を実現する企業グループを目指します。

主な取り組み

商品の端材・不良品を活用したリサイクルメラミン化粧板

メラミン化粧板の製造工程で生じる商品の端材や不良板を粉砕し、原材料の一部に活用したメラミン化粧板を開発しました。本製品が実用化すれば、当社が排出する産業廃棄物の削減につながります。将来的には商品として使用されたメラミン化粧板を回収・再利用することも視野に入れており、水平リサイクルの実現に向けた第一歩と考えています。

  • 商品の端材・不良品を活用したリサイクルメラミン化粧板

廃棄繊維を活用したリサイクルメラミン化粧板

古紙や廃棄衣類などが繊維素材化されたものを、意匠層に活用したメラミン化粧板を開発しました。本製品が実用化すれば、衣類廃棄物の利活用方法拡大につながり、循環型社会の形成に貢献します。

気候変動の影響による自然災害の激甚化や異常気象の頻発化に備え、BCPを強化します。定期的な訓練の実施により被災時の行動を確認するとともに、復旧に向けたフローや役割分担を明確化し、迅速に復旧できる体制を構築します。

気候変動問題に関する目標と実績

2050年度までにスコープ1+2のカーボンニュートラルを達成すべく、2022年度を基準年として、スコープ1+2を2026年度までに14%、2030年度までに42%を削減する目標を掲げています。この削減目標の達成に向けて、2023年度から2026年度にかけて温室効果ガス排出量削減に資する20億円の環境投資を計画しています。
また、スコープ3に関しては、化学メーカーとしてカテゴリー1(購入した製品・サービス)排出量の重要性が高いとの認識のもと、2026年度までに、海外を含めたグループ全体のスコープ3排出量の削減目標設定および削減策立案をマテリアリティの目標として掲げています。

目標と実績

  • 目標と実績の表

温室効果ガス排出削減のロードマップ

  • 温室効果ガス排出削減のロードマップ

実績推移 (スコープ1+2)

対象範囲:アイカグループ生産拠点、アイカ工業㈱ 本社・営業拠点

温室効果ガス排出量など、一部環境指標に対して第三者保証を受けました。詳しくはアイカレポート2025(P83-86)をご覧ください。

エネルギー使用の効率化に関する方針

燃料資源の大部分を輸入に依存せざるを得ない状況下にある日本においては、近年の国民経済の発展に伴う生産、流通及び消費の拡大、国民のライフスタイルの変化等を背景に、エネルギーの使用量は高い水準で増加しています。国際的なエネルギー需給が逼迫するおそれは、恒常的に存在します。また、主としてエネルギーの使用に起因する温室効果ガスの排出等による地球温暖化は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがある重大な問題となっています。このような認識の下で、エネルギー使用の削減・効率化を推進していきます。

エネルギー投入量の実績推移はこちらをご覧ください。

スコープ3排出量

当社は2013年度に初めて国内グループのスコープ3の算定を行いました。その後、算定手法を大幅に見直した上で、カテゴリー1・5・12に対し、2020年度実績値から第三者保証を受けています。2024年度には、算定対象を海外グループ会社まで広げ、特に重要度の高いカテゴリー1・12の排出量に対して第三者保証を取得しました。
化学メーカーの特徴として、国内外ともにカテゴリー1の比率が非常に高く、特に基礎化学品や有機溶剤などの石化由来原料からの排出量が高い傾向にあります。2026年度までに削減目標を設定するにあたっては、これら原料のサプライヤーと連携し、低炭素化の道筋を見出していくとともに、お客さまの脱炭素ニーズに積極的に応え、低炭素商品の開発・拡販を推進していきます。

排出量の詳細および、第三者保証取得状況についてはアイカレポート2025(P83-86)をご覧ください。

2024年度 アイカグループスコープ3排出量

  • アイカグループ 2024年度温室効果ガス排出量の内訳

算定対象カテゴリー

カテゴリー
1 購入した製品・サービス
2 資本財
3 スコープ1・2に含まれない燃料など
4 輸送・配送(上流)
5 事業から出る廃棄物
6 出張
7 雇用者の通勤
12 販売した製品の廃棄
13 リース資産(下流)

グリーン物流

輸送時に発生する温室効果ガスの排出量削減も、企業に課せられた課題の一つです。アイカグループでは全国の主要出荷拠点の物流担当者が営業部門と連携を取り、モーダルシフト、トラック貨物輸送の効率化、デポの整備などの改善を、継続的に実施しています。今後も、管理指標である貨物輸送トンキロ当たりのエネルギー使用量(重油換算)の削減に向けて、各種施策を講じます。

目標と実績

対象範囲:国内輸送(アイカ工業㈱が荷主となる物流)

2024年度目標2024年度実績2025年度目標
前年比 1% 削減
43.03㎘ / 百万トンキロ以下
前年比 2.3% 削減
44.44㎘ / 百万トンキロ
前年比 1% 削減
43.99㎘ / 百万トンキロ以下

実績推移(輸送トンキロ当たりエネルギー使用量)

対象範囲:国内輸送(アイカ工業㈱が荷主となる物流)

(㎘/百万トンキロ)

2020年度2021年度2022年度2023年度2024年度
45.23 44.70 45.04 43.47 44.44

LCAの活用

当社は、商品開発にLCAを導入・活用しています。
特にCO2排出量に関しては近年急速に重要性が高まっており、分析に注力しています。お客さまから商品ごとのカーボンフットプリントの提供依頼にも対応しています。

▼LCAの考え方