気候変動問題への対応
気候変動問題への対応に関する基本的な考え方
地球規模の課題解決に取り組む国際機関、世界経済フォーラム(WEF)が毎年発行している「グローバルリスク報告書」において、発生可能性が高く影響が大きいリスクとして気候変動に関連するものが複数挙げられました。世界規模で増加している異常気象を原因とした災害によって当社も近年幾度か被害を受け、気候変動は大きな事業リスクであると痛感しています。このような認識から、当社は中期経営計画に組み込んでいるマテリアリティに、「気候変動対応」を選定しています。2023年4月には温室効果ガス削減目標を原単位目標から総量目標へ変更し、2050年度カーボンニュートラルを宣言するなど大幅に見直し、達成に向けた活動をさらに強化しています。
気候変動問題への対応に関するガバナンス体制
気候変動問題対応の推進母体として、社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」の内部に「気候変動問題対応部会」を設置しており、生産部門・販売部門・開発企画部門・管理部門が一体となって抜本的な温室効果ガス削減策の立案や気候変動による機会獲得に向けた取り組みを推進しています。同部会の活動状況を含め、マテリアリティに対して設定したKPIの進捗およびそれに対する活動状況は、「サステナビリティ推進委員会」を通じて四半期に一度取締役会へ報告されています。
気候変動対応のリスク管理
気候変動対応に関するリスク管理は、全社的なリスクマネジメントの中で行っています。この過程を経て、「気候変動」を重大なリスクとして公表するとともに、マテリアリティのひとつとして特定しました。「サステナビリティ推進委員会」の内部に設置している「気候変動問題対応部会」や、両組織の事務局を務めるサステナビリティ推進部において、気候変動リスクを定期的に検証・管理しています。
シナリオ分析の実施状況および戦略への組み込み
リスクと機会の特定を目的として、2020年度に当社のステークホルダーに対してヒアリングを実施し、気候変動の影響によるリスクと機会、気候変動に対応するために当社が取り組むべき事項を整理しました。この調査により、今後ますます気候変動の影響が高まるとの認識が鮮明になったため、前中期経営計画よりマテリアリティとして「気候変動対応」を組み込むとともに、定性的・定量的な目標を設定しました。2022年度の上半期には、外部シナリオを使用し、特定したリスクと機会の各要素について、1.5℃・4℃の世界における2030年・2050年時点の定性的インパクト評価を行いました。さらに、2022年度下半期に、定性的インパクト評価において影響度が比較的大きいとの結果が得られたリスクと機会を対象に定量的財務インパクト評価を行い、下記の通り整理しました。これらの内容は、新中期経営計画にも反映しています。
シナリオ分析の実施概要および結果
シナリオ分析の対象範囲
- 移行リスクおよび機会:国内建設市場
- 物理的リスク:アイカグループ国内外生産拠点
想定したシナリオの概要
1.5℃シナリオ (気候変動への対策が進み、規制が強化される) | 4℃シナリオ (対策が遅れ、成り行きに気温上昇する) | |
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政策 |
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市場 |
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社会 |
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異常気象 |
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定量的評価結果および対応策
定性的評価結果はこちら
従来の売上高原単位削減目標を総量削減目標へ切り替え、新中期経営計画「Value Creation 3000 & 300」に組み込みました。より強力な削減策を講じ、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
当社独自の樹脂合成技術・素材活用技術をもとに、気候変動対応に資する商品を開発・拡販します。商品の高付加価値化を図り、気候変動によるコストアップをカバーし、激変する世界においても持続可能な成長を実現する企業グループを目指します。
気候変動の影響による自然災害の激甚化や異常気象の頻発化に備え、BCPを強化します。定期的な訓練の実施により被災時の行動を確認するとともに、復旧に向けたフローや役割分担を明確化し、迅速に復旧できる体制を構築します。
指標と目標
前述の通り、新中期経営計画において、2050年度までにスコープ1および2のカーボンニュートラル達成を目指すことを宣言しました。また、2022年度を基準年として、温室効果ガス排出量を2026年度までに14%を、2030年度までに30%を総量で削減する中期目標を掲げました。まずは中期目標の達成に向けて、2023年度から2026年度にかけて温室効果ガス排出量削減に資する20億円の環境投資を計画しています。スコープ3に関しては、海外を含めたグループ全体の排出量を把握した上で、2026年度までにスコープ3排出量削減目標を設定するとともに削減策を立案することをマテリアリティの目標として掲げました。
温室効果ガス排出量に関する目標(新中期経営計画)
中期経営計画の全体像はこちらをご覧ください。
目標と実績
2022年度の主な取り組み
2022年度に導入した太陽光発電設備
実績推移 (スコープ1&2)
対象範囲:アイカグループ国内生産拠点 アイカグループ海外生産拠点 アイカグループ国内営業拠点(26営業店所)
温室効果ガス排出量など、一部環境指標に対して第三者保証を受けました。詳しくはアイカレポート2023(P69-72)をご覧ください。
温室効果ガス排出量
- 合算値の対象範囲に、国内営業拠点を加えました。
売上高原単位温室効果ガス排出量
エネルギー使用の効率化に関する方針
燃料資源の大部分を輸入に依存せざるを得ない状況下にある日本においては、近年の国民経済の発展に伴う生産、流通及び消費の拡大、国民のライフスタイルの変化等を背景に、エネルギーの使用量は高い水準で増加しています。国際的なエネルギー需給が逼迫するおそれは、恒常的に存在します。また、主としてエネルギーの使用に起因する温室効果ガスの排出等による地球温暖化は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがある重大な問題となっています。このような認識の下で、エネルギー使用の削減・効率化を推進していきます。
エネルギー投入量の実績推移はこちらをご覧ください。
スコープ3 排出量
当社では2006年から商品の製造にかかる温室効果ガス排出量の把握、算定(LCA)に取り組んでおり、2013年度に初めてスコープ3の算定を行いました。カテゴリー1、5、12については、算定手法を大幅に見直した上で、2020年度実績値より第三者保証を受けています。アイカグループ国内生産拠点のスコープ3排出量は、カテゴリー1(購入した製品・サービス)が最も多く、ついでカテゴリー12(販売した製品の廃棄)が多い傾向が続いています。算定範囲を海外グループ会社へ広げるため、各社とのコミュニケーションを進めており、2023年度実績からグループ全体でのスコープ3の開示を目指しています。
排出量の詳細および、第三者保証取得状況についてはアイカレポート2023(P69-72)をご覧ください。
アイカグループ国内生産拠点 2022年度温室効果ガス排出量の内訳
アイカグループ国内生産拠点 2022年度スコープ3 排出量の内訳
(t-CO2)
カテゴリー | 排出量 | |
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1 | 購入した製品・サービス | 402,917 |
2 | 資本財 | 3,479 |
3 | スコープ1・2に含まれない燃料など | 9,676 |
4 | 輸送・配送(上流) | 15,946 |
5 | 事業から出る廃棄物 | 5,931 |
6 | 出張 | 1,183 |
7 | 雇用者の通勤 | 226 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 83,000 |
13 | リース資産(下流) | 112 |
注: カテゴリー8、10、11、14、15は算定から除外しています。集計範囲がカテゴリーにより異なります。除外理由および集計範囲の詳細はアイカレポート2023(P69-70)をご覧ください。
グリーン物流
輸送時に発生する温室効果ガスの排出量削減も企業に課せられた課題のひとつです。アイカグループでは全国の主要出荷拠点の物流担当者が営業部門と連携を取り、モーダルシフト、トラック貨物輸送の効率化、デポの整備などの改善を継続的に実施しています。
今後も、管理指標である貨物輸送トンキロ当たりのエネルギー使用量(重油換算)の削減に向けて、各種施策を講じます。
目標と実績
対象範囲:国内輸送(アイカ工業(株)が荷主となる物流)
2022年度目標 | 2022年度実績 | 2023年度目標 |
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前年比 1% 削減 44.25㎘ / 百万トンキロ以下 |
前年比 0.8% 増 45.04㎘ / 百万トンキロ |
前年比 1% 削減 44.59㎘ / 百万トンキロ以下 |
実績推移(輸送トンキロ当たりエネルギー使用量)
(㎘/百万トンキロ)
2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
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44.12 | 43.44 | 45.23 | 44.70 | 45.04 |
LCAの活用
当社は、商品開発にLCA(ライフサイクルアセスメント)を導入・活用しています。特にCO2排出量に関しては近年急速に重要性が高まっており、分析に注力しています。
低炭素型商品の開発にLCAを活用するとともに、商品ごとに炭素強度・環境負荷を把握し、地球環境に優しい商品の開発に努めます。
▼LCAの考え方