気候変動問題への対応

気候変動問題への対応に関する基本的な考え方

地球規模の課題解決に取り組む国際機関、世界経済フォーラム(WEF)が毎年発行している「グローバルリスク報告書」において、気候変動に関連する「異常気象」や「気候変動対策の失敗」が、発生可能性が高く影響が大きいリスクとして認識されていると発表されました。世界規模で増加している異常気象を原因とした災害によって当社も近年幾度か被害を受け、気候変動は大きな事業リスクであると痛感しています。このような認識から、当社は2021年4月に始動した新中期経営計画に、「気候変動対応」を含めたマテリアリティ(重要課題)を組み込みました。それぞれのマテリアリティ項目に具体的なKPIを設け、気候変動対応においては「温室効果ガス」「産業廃棄物」「水利用」に関する目標を掲げました。これらの目標に対する進捗管理を徹底し、確実に遂行します。
また、気候変動問題への対応策をより具体的に検討・実行するための推進母体として、2020年4月に「気候変動問題対応プロジェクト」を発足しました。2021年4月からはサステナビリティ推進委員会内部に移設し、生産部門・販売部門・開発部門・管理部門が一体となり、抜本的な温室効果ガス削減策の立案や気候変動による機会獲得に向けた取り組みを推進しています。

TCFD提言に基づく開示拡充に向けて

当社は、2020年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明しました。提言に基づく開示拡充に向けて、まずは当社を取り巻く環境が今後気候変動の影響によってどのように変化するのかを予測するため、当社のステークホルダーに対してヒアリングを実施しました。当社の主力市場である国内建設市場を対象とし、2020年11月~2021年3月にかけて、原材料の購入先・建設会社・設計事務所・デベロッパー・業界団体など、幅広い分野の方々からお話を伺うことができました。このヒアリングにより、気候変動の影響によるリスクと機会、気候変動に対応するために当社が取り組むべき事項は、下表の通りであると認識しました。
今後は、このリスクと機会をシナリオに照らし合わせて財務面から分析を進めるとともに、全社的なリスクマネジメントの中で気候変動についても監督し、適切に対策を講じていきます。

ヒアリングから見えてきた気候変動に伴うリスクと機会

分類リスク機会
移行シナリオ※1 炭素税引き上げ
  • 炭素税導入によるコスト増
  • 温室効果ガス排出量削減に資する商品需要増
省エネ・低炭素規制/政策
  • 化石由来原料使用に対する規制強化
  • エネルギーコスト増
  • 排出枠購入コスト増
  • 増税により施主の建設意欲が低下し、建設市場縮小
  • プラスチックゴミ規制強化による廃棄物処理コスト増
  • ZEH※3・ZEB※4補助金増による建設市場の活性化
  • 非化石由来原料使用商品需要増
  • リサイクル可能商品需要増
低炭素型商品への置換
  • 低炭素技術への当社の対応遅れ
  • 研究開発費や設備投資額の増加
  • 非化石由来商品需要増
  • 低炭素型商品需要増
消費行動の変化
  • 化石由来商品需要減
  • リサイクル不可商品需要減
  • 非化石由来商品需要増
  • リサイクル可能商品需要増
  • 木材活用需要増
原材料コストの増加
  • ナフサ減産、価格高騰
  • バイオマス原料への移行によるコスト増
  • 木材需要の変化による木材調達コスト増
業界批判
  • 化石由来原料を使用する企業に対する批判の高まり
  • 適切な環境指標・社会課題解決型商品のPRによる信頼獲得
ステークホルダーからの評判変化
  • 脱炭素化に消極的な企業への投資家評価低下
  • 取引先企業からの温室効果ガス削減要求
  • 取り組み強化による企業評価向上
物理的シナリオ※2 台風・豪雨の頻発化
  • 被災による損害・操業停止
  • サプライチェーンの分断
  • 支払い保険料の増加
  • 災害対策商品の事業機会拡大
降水パターンの変化
  • 地下水の減少による淡水調達コスト増
  • 建築物の強靭化に資する商品の需要増
平均気温の上昇
  • 従業員の熱中症リスク増
  • 冷房使用増によるエネルギーコスト増
  • 施工現場の労働生産性低下による省施工型商品需要増
  • 断熱材関連商品需要増
海面上昇
  • 海・河川の近隣拠点の被災リスク増
感染症
  • 感染症発生頻度増
  • 感染症の流行拡大による、抗ウイルス商品の需要増
  • 働き方の変容による建築需要の変化
  1. 移行シナリオ…気候関連の規制強化や脱炭素技術移行への対応など低炭素社会への移行に伴うもの
  2. 物理的シナリオ…気候変動による自然災害の増加や異常気象の常態化に起因する、物理的被害の増加に伴うもの
  3. ZEH…ネットゼロ・エネルギー・ハウス
  4. ZEB…ネットゼロ・エネルギー・ビルディング

当社が取るべき対応

パッシブ対応

気候変動の影響を最小限に抑え、事業活動の継続に向けてリスクに備える
対策を講じます。

リスクに備える対策の例

  • 自然災害に対するBCP強化
  • 原材料調達BCP強化
  • 抜本的な温室効果ガス排出量削減策の検討・実行
  • エネルギーの使用および構成の最適化
  • 廃棄物の削減・再資源化
  • 資源の効率的使用
  • 適切な情報開示とエンゲージメント

アクティブ対応

気候変動に対応する商品の開発・拡販に努め、社会に貢献するとともに、
当社と社会の持続的発展を図ります。

気候変動に適応する商品の例

  • 低炭素型商品
  • バイオマス原料を用いた商品
  • リサイクル可能商品
  • 木質資源活用に資する商品
  • 建築物の強靭化に資する商品
  • 省施工型商品
  • 断熱材関連商品
  • 抗ウイルス商品

温室効果ガスの排出削減(省エネルギー)

基本的な考え方

2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを目指す動きが各国で本格化しており、これに対応できない企業は市場から徐々に淘汰されると考えています。マテリアリティのKPIとして新中期経営計画に組み込んだ目標を確実に遂行し、ネットゼロ時代においても選ばれる企業体を目指します。
抜本的な削減策の検討と並行して、従来取り組んできた省エネ活動や、高効率生産設備の導入などの適切な設備投資を行い、エネルギー使用の最適化を図ります。

中長期の目標

2021年4月に始動した新中期経営計画において、下記の通り温室効果ガス削減に関する目標を掲げました。スコープ1・2に対しては、日本政府が2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを宣言したことを受け、実質ゼロを目指した具体的シミュレーションを実施することを目標に掲げました。中間地点である2030年度の目標について、現状設定している数値目標(売上高原単位温室効果ガス排出量 2013年度比26%削減)では不十分と認識しており、このシミュレーションの実施に合わせて目標引き上げに向けた議論を重ねていく予定です。また、スコープ3に関しては数値目標設定までは至りませんでしたが、グループベースの算定方法の確立と削減施策の立案を確実に遂行します。

スコープ1・2
(自社の活動由来)
  • 売上高原単位温室効果ガス排出量 2023年度までに10%削減(2020年度比)
  • 温室効果ガス排出量2050年実質ゼロを目指したシミュレーションの実施、施策立案
スコープ3
(自社の事業活動に関連する他社の活動由来)
  • スコープ3算定方法確立、削減に向けた施策立案

中期経営計画の全体像はこちらをご覧ください。

目標と実績(スコープ1・2)

2020年度目標2020年度実績2023年度目標
アイカグループ国内生産拠点
売上高原単位温室効果ガス排出量
前年比3%削減46.4t-CO2/売上億円以下
前年比0.2%削減
47.8t-CO2/売上億円
アイカグループ
売上高原単位温室効果ガス排出量
2020年度比10%削減
  • 2019年度の実績値に誤りが発見され数値を変更したことに伴い、過去に公表した目標値を見直しました。

2020年度の主な取り組み

  • ボイラー設備の温度設定最適化など管理強化
  • 乾燥機への1ロット商品投入量増量による高効率化
  • 高効率設備への更新
  • 製品不良率低減
  • 押出成形セメント板製造工程における養生庫内温度安定化(送風ファン、保温カーテン)
  • 送風ファン

  • 保温カーテン

実績推移 (スコープ1・2)

対象範囲:アイカグループ国内生産拠点 アイカグループ海外生産拠点 アイカグループ国内営業拠点(26営業店所)

温室効果ガス排出量など、一部環境指標に対して第三者保証を受けました。詳しくはアイカレポート2021(P61-64)をご覧ください。

温室効果ガス排出量

  • 温室効果ガス排出量の図

    ※2019年度の実績値に誤りが発見されたため、過去に掲載した数値から変更しています。

売上高原単位温室効果ガス排出量

  • 売上高原単位温室効果ガス排出量の図

エネルギー使用の効率化に関する方針

燃料資源の大部分を輸入に依存せざるを得ない状況下にある日本においては、近年の国民経済の発展に伴う生産、流通及び消費の拡大、国民のライフスタイルの変化等を背景に、エネルギーの使用量は高い水準で増加しています。国際的なエネルギー需給が逼迫するおそれは、恒常的に存在します。また、主としてエネルギーの使用に起因する温室効果ガスの排出等による地球温暖化は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがある重大な問題となっています。このような認識の下で、エネルギー使用の削減・効率化を推進していきます。

エネルギー投入量の実績推移はこちらをご覧ください。

グリーン物流

輸送時に発生する温室効果ガスの排出量削減も企業に課せられた課題のひとつです。アイカグループでは全国の主要出荷拠点の物流担当者が営業部門と連携を取り、モーダルシフト、トラック貨物輸送の効率化、デポの整備などの改善を継続的に実施しています。
今後も、管理指標である貨物輸送トンキロ当たりのエネルギー使用量(重油換算)の削減に向けて、各種施策を講じます。

目標と実績

対象範囲:国内輸送(アイカ工業(株)が荷主となる物流)

2020年度目標2020年度実績2021年度目標
前年比 1%削減
43.00㎘/百万トンキロ以下
前年比 4.1%増加
45.23㎘/百万トンキロ
前年比 1%削減
44.77㎘/百万トンキロ

実績推移(輸送トンキロ当たりエネルギー使用量)

(㎘/百万トンキロ)

2016年度2017年度2018年度2019年度2020年度
44.99 44.58 44.12 43.44 45.23

スコープ3 排出量

当社では2006年から製品の製造にかかる温室効果ガス排出量の把握、算定(LCA)に取り組んでおり、2013年度に初めてスコープ3の算定を行いました。2020年度においては、カテゴリー1、5、12の算定手法を大幅に見直し、値を更新しました。アイカグループ国内生産拠点のスコープ3排出量は、カテゴリー1(購入した製品サービス)が最も多く、ついでカテゴリー12(販売した製品の廃棄)が多いことが算定結果からわかりました。今後、主要カテゴリーに関しては毎年算定する計画です。

排出量の詳細および、第三者保証取得状況についてはアイカレポート2021(P61-64)をご覧ください。

▼アイカグループ国内生産拠点 温室効果ガス排出量の内訳

LCAの活用

当社は、商品開発にLCA(ライフサイクルアセスメント)を導入・活用しています。特に二酸化炭素排出量に関しては近年急速に重要性が高まっており、分析に注力しています。
低炭素型商品の開発にLCAを活用するとともに、商品ごとに炭素強度・環境負荷を把握し、地球環境に優しい商品の開発に努めます。

▼LCAの考え方

産業廃棄物の削減・リサイクル

基本的な考え方

1998年から産業廃棄物の削減に向けた具体的な取り組みを開始し、グループ全体の重要な環境指針としています。削減に向けた取り組みとして、産業廃棄物の減容化や、有価物化するための産業廃棄物の加工などを検討・推進しています。

目標と実績

2020年度目標2020年度実績2023年度目標

アイカグループ国内生産拠点
売上高原単位産業廃棄物発生量
前年比 2%削減 41.7ton/億円以下

前年比 26% 削減
31.5ton/億円
アイカグループ
売上高原単位産業廃棄物排出量
2020年度比 10%削減
国内生産拠点埋め立て処分率
1.0%以下
13.0% ̶

2020年度の主な取り組み

  • 製品不良率の改善
  • 使用済フィルムの有価物化
  • けい酸カルシウム板端材の有効活用
  • コンテナ自動洗浄装置導入による廃液削減
  • コンテナ自動洗浄装置

実績推移

対象範囲:アイカグループ国内生産拠点 アイカグループ海外生産拠点

産業廃棄物排出量

  • 産業廃棄物排出量の図

売上高原単位産業廃棄物排出量

  • 売上高原単位産業廃棄物排出量の図

  • 2021年度より、産業廃棄物の指標を発生量から排出量に変更しています。

水使用量の削減

基本的な考え方

アイカグループは、限りある資源である水の有効利用に努め、グループ全社で適切な水利用を心掛けています。2021年4月に始動した新中期経営計画において、「気候変動対応」をマテリアリティとして掲げ、KPIの一つである「ハイリスクエリアにおける売上高原単位水使用量の削減」に対して目標を設定しました。現地調査を実施した上で、該当エリアにおける水使用の最適化を図ります。
国内生産拠点では工業用水・地下水を使用しており、名古屋工場・甚目寺工場では水の循環使用を進めています。
海外生産拠点においては、水事情に深刻な国もあり、有限な資源であることを認識して各国事業所がそれぞれの必要な対応をとり使用管理していきます。世界資源研究所(WRI)が公表しているAQUEDUCTを参考に、ハイリスクエリアを特定し、優先的に水の有効利用を推進しています。インド北西部に位置するアイカ・ラミネーツ・インディア社では、製造工程で水の循環利用を行っており、また廃水は工場内の設備で処理しガーデニング用途に活用しています。

目標と実績

2020年度目標2020年度実績2023年度目標
国内アイカグループ(アイカテック建材(株)を除く)
生産高原単位取水量
前年比 2%削減
前年比 6%増加

ハイリスクエリアにおける売上高原単位水使用量
2020年度比 6%削減

実績推移

対象範囲:アイカグループ国内生産拠点 アイカグループ海外生産拠点

水使用量

  • 水使用量の図

ハイリスクエリア※1における2020年度水使用量

拠点名所在地使用量
アイカ・ラミネーツ・インディア社 インド北西部 26,100m3
アイカインドネシア社
テクノウッドインドネシア社
チカンペック
(インドネシア)
25,300m3
アイカインドリア社
(AAPH※2グループ)
パスルアン
(インドネシア)
44,600m3
瀋陽愛克浩博化工有限公司 中国東北部 4,700m3
  1. WRI Aqueduct「 Overall water risk」において「Extremely High」と評定された拠点
  2. アイカ・アジア・パシフィック・ホールディング

WRI Aqueduct「Over all water risk」に基づくリスクレベル別拠点数

リスクレベル拠点数
Extremely High 6
High 5
Medium - High 7
Low - Medium 17
Low 3